『正欲』の大ヒット御礼トークイベントが12月11日(月)にTOHOシネマズ日比谷で行われ、稲垣吾郎、岸善幸監督が登壇した。

第34回柴田錬三郎賞を受賞した朝井リョウによる小説『正欲』を監督・岸善幸×脚本・港岳彦、稲垣吾郎×新垣結衣の出演で映画化。家庭環境、性的指向、容姿――様々に異なった“選べない”背景を持つ人たちを同じ地平で描写しながら、人が生きていくための推進力になるのは何なのかというテーマを炙り出していく衝撃的なストーリー。岸善幸がメガホンをとり、『あゝ、荒野』で岸監督と組み、本年も執筆作品が立て続けに公開される港岳彦が脚本を担当。稲垣吾郎と新垣結衣が、息子が不登校になった検事・寺井啓喜と、特殊性癖を持つことを隠して生きる・桐生夏月を演じる。物語が進むにつれ、別の場所でそれぞれの人生を歩んできた彼らの関係は、少しずつ交わっていく。どうしたって降りられないこの世界で、生き延びるために大切なものを、強い衝撃や深い感動とともに提示する。

多くの反響を受け、「覚悟がいる作品だった、忘れられない撮影期間だったのでうれしく思います」と喜ぶ稲垣。岸監督は「悩みながら作ってきた作品なので。反響がいいなと自分自身も思っていて」といい、さらに香港と台湾での上映を訪れた岸監督は「反響がよくてびくりしました。すごくたくさんの質問があって、国境を越えて受け入れられてるんじゃないかという気がしました」と振り返り、「僕たちが伝えようとした人間の生き方が伝わっていると思った」と語った。また、稲垣は「観る人の視点や価値観で見え方が変わってくると思う」といい、「気づきのきっかけになる映画として作っていただいた。話し合える時間が幸せですね」と語った。

劇中で演じた役柄の揺れる価値観について「大きく演じたくなかったので。監督を信用して、寄り添って導いてくださったので」と感謝する稲垣だが、岸監督は「今回は放置できないというか、重い題材だし難しいテーマだし。現場を和やかにする会話をしていた気がして」と振り返った。その撮影現場については「細かいこととか、同じセリフを何度も、“もう一回”ということはない」という稲垣に、岸監督は「出ていただけるということで、90%くらいこうなるんだろうなと」とキャスティングの時点である程度の想像がついているといい、残りの“10%”の部分について「僕が一言言ったら、これまでの稲垣さんじゃないくらいパワーを発揮してもらえるとか、そういうことを考えています」と明かすと、稲垣はシーンの直前に「ふとした一言なんです。すっと横に現れて“こそこそ”って。あれが響くんです」と撮影時のエピソードを明かした。

本作では編集も担当している岸監督だが「放置していく演出をしていて。違う演技があるかもしれないと。だいたい放置したときの演技、何も言っていない時の演技を使っています。そっちの演技のほうがよかったです」と明かした。稲垣は「自分が意図しない、こういう演技をしようという表情が使われていないから、自分が見たことがない自分でした。それを引き出してくれた」という。使わなかったシーンも多かったと稲垣が話すと、岸監督は「苦しみながら切っています」と笑いを誘った。

最後に稲垣は「映画が公開してからしばらく時間が経ってからまた登壇して、監督と楽しいお話ができて、みなさんが来てくださってうれしい気持ちでいっぱいです」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『正欲』は全国で公開中
監督:岸善幸
出演:稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香
山田真歩、宇野祥平、渡辺大知、徳永えり、岩瀬亮、坂東希、山本浩司
配給:ビターズ・エンド
© 2021 朝井リョウ/新潮社 © 2023「正欲」製作委員会