藤竜也、水崎綾女、河瀨直美監督、永瀬正敏、神野三鈴

第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されている『光』の公式記者会見が行われ、河瀨直美監督、主演の永瀬正敏、水崎綾女、神野三鈴、藤竜也、澤田正道プロデューサーが出席した。

今回、日本映画として唯一コンペティション部門に選出された本作『光』。8度目のカンヌ国際映画祭への出品となる河瀨直美監督、日本人初の3年連続の参加となる永瀬正敏のほか、水崎綾女、神野三鈴、藤竜也、澤田正道プロデューサーが参加して行われた公式記者会見とフォトコール。今回、河瀬監督の作品に初出演となる水崎との出会いや、本作のタイトルに込められた意味などが語られた。

視力を失いつつあるカメラマンが主演の本作について、映画監督にとってその題材は悪夢なのでは?という質問に「その最悪の暗闇の中に指す一筋の光を表現しようと決意しました」と答えた河瀬監督は、続けて本作のきっかけについて「前作『あん』の音声ガイド制作者からの資料をみていた時に、私たち制作者以上にこんなにも映画を愛していて、全ての人に届けようとしていると気付いたんですね。そういう人たちを主人公にした作品を作ることで、映画への愛を描けると思いました」と語った。

その難しい役どころに挑戦した永瀬は、河瀬監督の演出について「演じるというよりは、役そのものを生きるということを一番中心におかれた現場です」と明かし「いつ撮影されてもいいように、僕たちはいつも役を生きています」と現場での様子を語った。また、役作りについては「撮影に入る1か月前から目の不自由な方に沢山お会いして、生活を見せていただいたり、気持ちを聞いたりしました。思い出したくないことも教えていただいた」と振り返った。

今回初めて河瀬監督作品への起用となった水崎について、オーディションで選出したポイントを“目”だと明かした河瀬監督。「彼女が見るまなざしのその先にある光を、私たちは作りました」と本作のタイトルにかけて語った。また、そのタイトルについては「とても勇気のいるタイトルでした」とコメントした河瀬監督は「映画で本気で戦争をなくしたり、地球を豊かにしたいと思っている人が沢山いると思います。でも、この世界から戦争はなくならないし、私たちは必ずこの世界からいなくなる。でも、作った映画は永遠に残り続けると信じたい。私は魂を捧げました」とそのタイトルに込められた意味を明かした。

また、今回のカンヌ国際映画祭ではクラシック部門で『愛のコリーダ』が再上映されているが、同作に出演する藤は「あの映画が好きな人もいて、嫌いな人もいる。それがあの映画の長生きの秘訣ではないか」とコメント。さらに「久しぶりのカンヌの感想は?」と聞かれ「カンヌについては、お金を出せば来られます。カンヌ映画祭はいくらお金を出しても来られません。今回来られたことはラッキーです。河瀬監督にいつもありがとうと言っています」とジョークを交えて語った。さらに河瀬監督の演出は「とてもユニーク」と答えた藤は「ちょっと信じられないような、超人間的なパワーを感じることがあります」とそのパワーに圧倒されている様子。

さらに、河瀬監督の演出について聞かれた水崎は「なかなか日本では味わえないような演出」と表現し「役者としては有り難い現場」とコメント。続けて「撮影中は大変なこともありましたが、これから力になっていくと思います。私の今迄の経験を壊して、積み木を壊して、新たに作るという形で撮影しました」と振り返った。

最期に本作で3年連続のカンヌ国際映画祭への参加となる永瀬に「カンヌ映画祭とはどんな場所ですか?」という質問が寄せられると「恵まれていますね。とても監督に感謝しています。何度も国際映画祭に連れてきていただいて、本当に嬉しいです。一生懸命世界中に広がるきっかけになると思うので、特別な場所だと思います。また河瀬監督に連れていて欲しいです」と語った。

河瀨直美監督がオリジナル脚本で送り出す本作。主演は、国内外で活躍する俳優・永瀬正敏。2度目のタッグとなる本作では、弱視の主人公・雅哉を演じ、葛藤の中で希望の光を求めさまよう男を演じている。さらにヒロインには、新進女優として注目されている水崎綾女。バリアフリー映画の音声ガイドとして、その光の中に生きる意味を見出していく女性・美佐子を演じる“映画”というもうひとつの人生を観客と共有するべく音声ガイドの制作にたずさわる美佐子は視覚障碍者向け映画のモニター会で弱視のカメラマン、雅哉と出逢う。映画の光に導かれるように二人は、衝突を繰り返しながらも互いの心をゆっくりと通わせていく―。

映画『光』は2017年5月27日(土)より新宿バルト9、丸の内TOEIほか全国で公開!
監督・脚本:河瀨直美
出演:永瀬正敏、水崎綾女/神野三鈴、小市慢太郎、早織、大塚千弘/藤竜也
配給:キノフィルムズ
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