『朝が来る』の完成報告会見が10月6日(火)に都内で行われ、河瀨直美監督、永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、佐藤令旺が登壇した。

6月に公開を予定していた本作だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開が延期、今回10月23日の公開を前に記者会見が行われた。コロナ禍において「暗いトンネルの中にいったん入りこみ、その先に見える光に向かって、今みなさんの前に現れたと思っていて感無量です」と感慨深げに挨拶した河瀨監督。

本作では、“特別養子縁組”という制度を取り上げているが、その制度については「知らなかった」という河瀨監督は「私は養女です。違いは戸籍の中で実子として迎え入れられるところ。そこは大きく違うと思った」と語り、「真実告知をするということをきちんとしているので、素晴らしいと思いました。救われる命があるんだと思いました」とコメントした。

劇中で夫婦を演じる永作と井浦。永作は「新さんとは役ではなく、夫婦が家で相談しているかのような、『何が気になる?』と普通に話を進めていった現場だったので、小さなことを逃さないように丁寧に作っていった」と振り返った。井浦も「完全なる準撮りで撮っていってくださるので、演技ではなく一日一日撮影を経験していくことが自然と心の動きにも変化していく。目の前で起きていることを丁寧に拾いあっていきながら、素直に心を動かしていくことを大切にしました」と明かした。

撮影のクランクイン前には、数か月にわたって特別養子縁組や不妊治療などについてしっかりと学ぶ基幹があったといい、“役積み”の期間は「すべてが特別な経験」と井浦が明かすほど濃い時間を過ごした様子。浅田は「受験勉強のように資料があって、(劇中で)誰から質問があるか分からなくて・・・。今聞かれてもすべて答えられます」とまさに役そのものになっていたことを明かした。蒔田は「家族の人たち、お父さん、お母さん、お姉ちゃんと一緒に3週間近く住んで、その期間で出来上がった関係性が映画の中にも映っていたと思います」と振り返った。そういった“役積み”について河瀨監督は「想像を超える現実がある」と重要性を説いた。

最後に河瀨監督は「新しい命がどのような形だとしても、この世界が美しいと思えるような、そんな場所にこの映画が小さなかけらでもいいから力になればいいと思っています。映画によってネガティブな感情をポジティブに変えていくことは、作り手にとってこんなに素晴らしい喜びはないと思っています。最後に結んでくれるのは映画館に来てくれるみなさんです。この映画を育ててください。みなさんに会いたいです」と本作をアピールした。

作家・辻村深月のヒューマンミステリーを河瀨直美監督が映画化した本作。実の子を持てなかった夫婦と、実の子を育てることができなかった 14歳の少女を繋ぐ「特別養子縁組」によって、新たに芽生える家族の美しい絆と胸を揺さぶる葛藤を描く。実の子を持つことが叶わなかった夫婦、栗原佐都子役に永作博美、栗原清和役に井浦新。望まぬ妊娠をし、実の子を育てることができなかった少女・片倉ひかり役に蒔田彩珠。そして栗原夫婦と片倉ひかりを引き合わせる人物・浅見静恵役を浅田美代子が演じ、実力派俳優が、人間の真実に踏み込む演技で圧倒する。血のつながりか、魂のつながりか──現代の日本社会が抱える問題を深く掘り下げ、家族とは何かに迫り、それでも最後に希望の光を届ける感動のヒューマンドラマが誕生した。

【写真・文/編集部】

映画『朝が来る』は2020年10月23日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開!
監督・脚本:河瀨直美
出演:永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子、中島ひろ子、平原テツ、駒井蓮、田中偉登、佐藤令旺、利重剛
配給:キノフィルムズ/木下グループ
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