『最後の渡り鳥たち』
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第34回東京国際映画祭アジアの未来部門『最後の渡り鳥たち』。

「アジアの未来」部門の合言葉は"アジア発、世界へ!未来へ!"―。長編3本目までのアジア(日本・中東を含む)の新鋭監督の作品を世界に先駆けて上映されるアジア・コンペティション部門。今年は日本映画2本が入選し、すべて世界初上映(ワールド・プレミア)の10作品が競い合う。

夏と冬が来る度にラクダやヤギとともに移住するテント暮らしの遊牧民の家族。伝統的な暮らしと近代化の間で揺れるなか、移動の季節が巡ってくる。彼らはどんな未来を選択するのか?

CGかのような美しい光が差し込む森林の風景から物語は始まる。年に2回400キロを移動し、子供たちは夏は学校に通い、冬になると高地へと移動するため学校へは通えなくなる。また、政府が移住禁止令をひいているなど、日本ではなかなか触れることのない問題に直面する。ドキュメンタリー映画のようで、死ぬまで遊牧民を続けると言いきる祖母を中心に遊牧民一家の様子が描かれている。家族の中で子どもたちへの思いや現代文化への考え方の違いなど遊牧民ならではの悩みもあるが、家族のすれ違いや一人の人間としての考えは、文化の違いはあれど私たちと根本は変わらないのかもしれない。孫娘のエリフが書いた詩には、自分たち家族を、タイトルの「最後の渡り鳥」という言葉で表現し遊牧民の歴史と誇りが詰まっている内容と感じた。

【文/片岡由布子】

第34回東京国際映画祭は2021年10月30日(土)~11月8日(月)に日比谷・有楽町・銀座地区で開催!
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