『流浪の月』のフレッシャーズ試写会が5月8日(日)に都内で行われ、広瀬すず、松坂桃李が登壇した。

実力と人気を兼ね備えた俳優・広瀬すずと松坂桃李の2人が紡ぐ物語は、2020年本屋大賞を受賞し、同年の年間ベストセラー1位(日販単行本フィクション部門、トーハン単行本文芸書部門)に輝いた凪良ゆうによる傑作小説が原作。10歳のときに誘拐事件の“被害女児”となり、広く世間に名前を知られることになった女性・家内更紗を広瀬が、その事件の“加害者”とされた当時19歳の青年・佐伯文を松坂が演じる。いつまでも消えない“被害女児”と“加害者”という烙印を背負い、息を潜めるように生きてきた2人。誰にも打ち明けられない秘密をそれぞれに抱えたまま、15年後に再会した2人が選んだ道とは―。監督を務めるのは李相日。

約50人の新社会人を前に「同世代のみなさんにこの作品がどう映って、どう届いたか気になる」と挨拶した広瀬。今回、初めて李相日監督作品に出演した松坂は「自然と役と作品の没入できる感じがあって、あっという間に時間が過ぎていく。貴重でした」とワンシーンごとに向き合う李相日監督との初タッグに喜びを見せた。一方で『怒り』で李監督作品に出演した広瀬は「知らぬ間にいろんなものを感じています」と吸収することが多い現場であることを明かした。

新しい現場に入るときには「聞くこと」を心掛けているという松坂は「自分はゼロの状態なので。各部署の人たちがどういうスタンスで取り組んでいるのか、考え方を聞くのは大事だと思います」とコメント。広瀬は「聞くと同じ感覚で見て、人柄もわかったらいいなと。お名前を覚えたり、みなさんも私に気を遣わないように、お芝居を気を遣わないでできるように意識したりはします」と松坂の考えに共感している様子だった。

観客からの質問に広瀬と松坂が答えるコーナーでは、“壁にぶつかった時にどう乗り越えたか”という質問が寄せられ、「遠慮なく甘えます。その時は助けてもらったからこそ、がんばりたいと思う精神でいる」と自身の経験を振り返る広瀬は「それができないタイプだったので、20歳を過ぎてできるようになった。話すことってこんなにも楽になるんだなと体験したことがあって、それから支えてくれる人には甘えるようにしよう」と語った。一方で「一回立ち止まる」という松坂は「周りを気にし始めると“やらなきゃ”ってなりがちなんですけど、勇気を振り絞って立ち止まってみるのも一つの方法かなと思います。自分がやれることが見えてきたりもする」と同じく自身の経験から語った。

また、応援メッセージを求められた広瀬は「無理せず、周りがどうであっても自分を見失わないことは大変だと思うんですけど、一歩立ち止まってみるとか、自分がホッとできる時間を大切に、がんばりすぎず、行くぞってときだけ力を入れてがんばっていただけたら」と自身が受け取って大切にしているという言葉を伝えた。松坂も「自分にとってと相手にとってのがんばる基準が違ったりするから温度差が生まれたりする。がんばらないことをがんばることが肩の力が抜けると思う」とエールを送った。

続けて、”希望の部署に配属されなかったらどうがんばればいいか”という質問が寄せられると、自身も希望する作品に出演できなかったときを考え、「今思うと、この作品をやったからこそこの作品につながったという部分があるので、振り返ると自分にとっての最短ルートだったと思う。“違った”ではなく、自分の中での最短ルートがその歩み方だと思うと、いい意味で割り切った仕事のマインドで挑めると思う」と自身の経験を重ねた。広瀬も「その瞬間に答えは出ないと思うけど、運命とかタイミングであったり、感じることがあって。その瞬間は目の前のことにしがみついて、思うことがありながらも、よかったなって思う瞬間が何年か経って感じたり、実感する機会が増えていて」と共感していた。

さらに、“なんで俳優をやっているのかと迷った時にはどうした?”という質問に、「なんとなくお姉ちゃんの後ろをついていったという感覚が強かったので、初めはずっと思っていました」と明かした広瀬だが「いまやめても私には何も残ってなくて。負けることが悔しくて。勝つまで、自分が満足するまで絶対やってやろうと思ってました。だから、気合い?(笑)…の部分が最初はあった」と吐露し、「気づいたら好きになってた。情が出てくることで思考が変わって。悔しいと思うことよりも、大切にしたいという思考に変わった」と明かした。

最後に広瀬は「みなさんの見えている世界の視点を聞くことができて、同世代の一人として勇気をもらえました。更紗と文のように強く、たくましくいてほしいなと思います。いろんなことを気になりながらも生活したり、お仕事をしたり、みんなそうなんだろうなと思いながら、でも粘り強くがんばってほしい」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『流浪の月』は2022年5月13日(金)より全国で公開!
脚本・監督:李相日
出演:広瀬すず、松坂桃李/横浜流星、多部未華子/趣里、三浦貴大、白鳥玉季、増田光桜、内田也哉子/柄本明
配給:ギャガ
©2022「流浪の月」製作委員会