元ビーチ・ボーイズのブライアンに密着した初めてのドキュメンタリー『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』のブレント・ウィルソン監督がブライアン・ウィルソンの魅力について語った。

「サーフィン・U.S.A.」「グッド・バイブレーション」「神のみぞ知る」、そして名盤『ペット・サウンズ』『スマイル』―聴く者の心を撃ち抜く歌唱と旋律の美しさ。音楽の神に愛された「ビーチ・ボーイズ」の創設メンバー、ブライアン・ウィルソン。その輝かしすぎる栄光の日々の半面、稀代の天才ソングライターが抱えていた、哀しくも壮絶な真実―。元ローリング・ストーン誌のベテラン編集者のジェイソン・ファインとともに、幼少期に過ごした家や「サーフィン・サファリ」のジャケット写真が撮影されたパラダイス・コーブなど、ゆかりの西海岸の街をめぐっていく。人生の喜びと悲しみを振り返り、秘められた想いが今、「天才」自身の言葉によって紡がれる。

幼いころからビーチ・ボーイズ、ブライアン・ウィルソンのファンだったというブレント監督はこれまで彼に関するドキュメンタリーも観て、たくさんの本も読んできたというが、それでも本質的に「どういう人間かは分からなかった」と話す。当初は監督がインタビューしていく形で撮影を進めていく予定だったが、インタビューが大嫌いなブライアンにはその方法はうまくいかなかった。そこで古くからのブライアンの友人であるローリングストーンの編集者のジェイソン・ファインがブライアンを車に乗せて2人きりでLA中をドライブしながらその間に質問をするという方法で撮影を進めることに。

すぐさまブレント監督は“素晴らしい映画になりそうだ”と予感したという。それでも撮影に3年間、編集に9か月かかった本作。見どころとして、劇中ではアーティストとしての側面に加え、ひとりの人間としての姿も見ることができる貴重なプライベート映像が随所に散りばめられている点を挙げる監督。その象徴的なシーンの1つとして、ブライアンが結婚式の誓いを立てるところで失敗をする、言いよどんでしまうというとうい場面も映し出される。撮影を通してブライアンのレジェンドの面に加え、人間らしい面の両方を発見できたと喜ぶ監督。

「彼がどれだけユーモアがあり、その一面を見れたことはとても嬉しかった。アスリートとしても素晴らしいというのも驚きました。たくさん友達もいて、本当に普通のティーンエージャーで、野球をやりたいという夢があった。どれだけ普通だったかということが発見でした」と語る。これから映画を観る観客に向けて監督は「人間としての本当のブライアンをどう捉えているかっていうところ。そしてブライアン・ウィルソンが人としてどれだけ強いかも観てもらいたいです」と見どころとメッセージを寄せた。

ビーチ・ボーイズの成功までの歩みを人生の第1幕とするなら、その後の薬物中毒や精神疾患との闘いを第2幕、そこからの脱出と復活を第3幕と考えられる。その再出発の日差しの中で人生の喜びと悲しみを振り返ったのがこのドキュメンタリー。8月19日(金)には、音楽評論家の萩原健太と能地祐子による公開記念トークイベントも開催される。

『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』は全国で公開中!
監督:ブレント・ウィルソン
出演:ブライアン・ウィルソン、ジェイソン・ファイン、ブルース・スプリングスティーン、エルトン・ジョン、ニック・ジョナス、リンダ・ペリー、ドン・ウォズ、ジェイコブ・ディラン、テイラー・ホーキンス、グスターヴォ・ドゥダメル、アル・ジャーディン、ジム・ジェームズ、ボブ・ゴーディオ
配給:パルコ ユニバーサル映画
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