『冬薔薇』の完成披露上映会が5月17日(火)に新宿ピカデリーで行われ、 伊藤健太郎、小林薫、余貴美子、阪本順治監督が登壇した。

阪本順治監督によるオリジナル脚本で、人間の業を切なく儚く紡ぐ本作。主人公の青年・渡口淳を演じるのは、本作が2年ぶりの映画出演となる伊藤健太郎。阪本監督が伊藤健太郎をイメージして当て書きした。ある港町。専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるみ、友人や女から金をせびってはダラダラと生きる渡口淳(伊藤健太郎)。“ロクデナシ”という言葉がよく似合う中途半端な男だ。両親は埋立て用の土砂をガット船と呼ばれる船で運ぶ海運業を営むが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ませながらもなんとか日々をやり過ごしていた。淳はそんな両親の仕事に興味も示さず、親子の会話もほとんどない。そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きる。そこに浮かび上がった犯人像は思いも寄らない人物のものだった……。

「ここに立てていること、この景色を見れていることを非常にうれしく思っています。お届けできる日が来たことをありがたく思っています」と挨拶した伊藤。2年ぶりの映画出演に「非常にうれしかった、そして感謝以外の何物でもない。こうしてまたスクリーンに戻れるんだとわかった時はうれしかったですし、あのタイミングで手を上げてくださった阪本監督には感謝しかない」と言葉を噛み締め、「味わったことがない感覚と言うか…この景色が早く見たかったと思いながら過ごしていたので…」と目に涙を浮かべつつ、声を震わせながら思いを語った。

そんな伊藤との共演に「縁を感じた」と言う小林だが、小林や余との共演は「財産でしかない」と喜びを表現した伊藤。この日は取材で一緒に写真を撮ったようで、「かっこいい家族写真みたいだった」と笑顔を見せた。母親役の余は「すぐに親子になれました。健太郎さんのおかげです」と雰囲気の良さをうかがわせた。

伊藤の役をあて書きするにあたって、事前に伊藤に会った際の印象を「どんな質問をしてもごまかさず、初対面の人間にすべてを語ってくれたので信頼できると。2時間じっくりしゃべって、仲間としてやりましょうと」と振り返った阪本監督。その時の事を「何喋るんだろうなという部分があったので考えながら」向かったという伊藤だが、阪本監督の思いを汲んで「安心して自分のことを伝えることができました」と話したことを明かした。

そんな伊藤の魅力を「本人を前に言いますか?」と照れ笑いを浮かべつつも、阪本監督は「演技の表現の仕方を見つつですけど、一言で言うとスクリーンが似合う。スクリーンのアップにたえられる…当然小林さんも余さんも」と称賛した。

一方で撮影に入る際は「めちゃめちゃ怖かったです。怖い気持ちはあったんですけど、すごく温かい雰囲気の中で撮影をさせていただいたので、余計な不安要素は初日に取り除けた」と振り返った伊藤。「先輩たちの背中がめちゃくちゃかっこよかった」と感慨深げに振り返る伊藤だが、小林は「年よりの話は飽きちゃうんじゃないかな(笑)」と自虐を交えつつも振り返ったが、そんな中でも伊藤は先輩俳優の話を熱心に聞いていたという。

最後に小林は「若い人たちの世界もある中で、僕たちのような人たち、家族の話も入っているので、自分に近い話じゃないかと引き付けて見てもらえるといいなと思います」、伊藤は「映画復帰と言う形で携わらせていただきました。意見が賛否あることは覚悟しえいます。けど、公開するにあたって怖い部分ももちろんあるんですけど、あの時自分があのタイミングでできる最大の力は出したつもりなので、自身を持ってお届けできると思います。この場を借りて、自分がここに立てているように、『冬薔薇』に携わってくださった方々、事務所の方々、家族・友達・すべての方々、何よりここに来てくれている方々に感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうとございました」とメッセージを送った。

【写真・文/編集部】

『冬薔薇』は2022年6月3日(金)より新宿ピカデリーほか全国で公開!
脚本・監督:阪本順治
出演:伊藤健太郎、小林薫、余貴美子、眞木蔵人、永山絢斗、毎熊克哉、坂東龍汰、河合優実、佐久本宝、和田光沙、笠松伴助、伊武雅刀、石橋蓮司
配給:キノフィルムズ
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