第36回東京国際映画祭で実施される「小津安二郎生誕120年記念企画」の上映作品や、Nippon Cinema Now部門特集〈城定秀夫監督〉、アニメーション部門などの主要特集企画が発表された。

10月23日(月)~11月1日(水)に開催される第36回東京国際映画祭では、例年以上に様々な企画や特集上映が数多く実施される。本年の目玉企画として、小津安二郎生誕120年を記念した特集上映やイベントを実施。昨年は故・青山真治監督を特集したNippon Cinema Now部門では、近年多彩なジャンルの作品を精力的に生み出している城定秀夫監督の特集を行う。また、昨年まで「ジャパニーズ・アニメーション部門」として、日本の作品のみを上映しきたが、今年からは「アニメーション部門」と名称を変更し、国内のみならず、海外の話題作も上映される。その他、様々な特集上映も実施される。

小津安二郎生誕120年記念企画“SHOULDERS OF GIANTS”

今年は小津安二郎の生誕120年、没後60年にあたる。今、あらためて小津作品に光をあて、わたしたちが小津から何を学び、どう未来につなげてゆくべきかをグローバルな視点で考える。今回、新たにデジタル修復した多くの作品を初公開する他、国立映画アーカイブでの小津安二郎監督週間(10月24日~29日)の貴重なフィルムでの上映と合わせるとほぼ全ての小津作品が網羅される大々的な特集となる。また、世界的に活躍する映画監督を招いて、それぞれの視点から小津を考える国際シンポジウムも実施。企画のテーマである“SHOULDERS OF GIANTS”は、「小津という偉大な監督の肩にのって、映画の未来をみてみよう」という思いを表している。

①小津安二郎生誕120年記念特集上映

特集上映ではワールド・プレミアを含む小津作品のデジタル修復版18作品を上映。国内外で愛される小津の名作を美しい映像で楽しめる。

東京国際映画祭上映作品
『突貫小僧マーヴェルグラフ版』(1929)、『大人の見る繪本生れてはみたけれど』(1932、★WP)、『非常線の女』(1933★)※トランペッター黒田卓也による生演奏付き上映、『菊五郎の鏡獅子』(1936、★WP)、『父ありき』(1942★)、『長屋紳士録』(1947★)、『風の中の牝雞』(1948★)、『晩春』(1949★)、『宗方姉妹』(1950★)、『麥秋』(1951★)、『東京物語』(1953★)、『東京暮色』(1957★)、『彼岸花』(1958)、『お早よう』(1959)、『浮草』(1959★)、『秋日和』(1960)、『小早川家の秋』(1961★)、『秋刀魚の味』(1962)
※★は4Kデジタル修復版
※WPは4Kデジタル修復版としてのワールド・プレミア上映

国立映画アーカイブ「小津安二郎監督週間」上映作品
『学生ロマンス・若き日』(1929)、『大学は出たけれど』(1929)、『東京の女』(190)、『淑女と髯』(1931)、『突貫小僧パテベビー短縮版』(1929)、『突貫小僧マーヴェルグラフ版』(1929)、『朗らかに歩め』(1930)、『その夜の妻』(1930)、『東京の合唱』(1931)、『青春の夢いまいづこ』(1932)、『出來ごころ』(1933)、『母を恋はずや』(1934)、『浮草物語』(1934)、『東京の宿』(1935)、『一人息子』(1936)、『淑女は何を忘れたか』(1937)、『戸田家の兄妹』(1941)

②小津安二郎生誕120年記念シンポジウム“SHOULDERS OF GIANTS”

冒頭ヴィム・ヴェンダースによる小津へのオマージュ(讃辞)に続き、『お早ようデジタル修復版』(1959)を上映。上映後、黒沢清、ジャ・ジャンクー、ケリー・ライカートといった世界的に活躍する映画監督が登壇し、小津作品をめぐるトークセッションを行う。

日時:2023年10月27日(金)16時20分開場/16時50分開会/19時45分終了予定
会場:三越劇場(日本橋三越本店 本館6階)
チケット情報:2023年9月28日(木)10時より発売
三越劇場チケットショップ: こちら

③提携企画

「小津安二郎生誕120年×三越創業350周年特別企画 音語り|東京物語~小津安二郎を聞く~」
松竹、創業350周年を迎えた三越、小津が多感な時期を過ごし三越の創業者三井高利との所縁も深い三重県松阪市による特別共催企画。公演の前半では、幼少のころ小津から孫のように可愛がられていた中井貴惠が思い出を語り、後半はジャズピアニスト松本峰明の演奏とともに『東京物語』の台本を朗読する。

日時:2023年10月26日(木)15時開始/16時45分終了
会場:三越劇場(日本橋三越本店 本館6階)

「小津安二郎生誕120年企画“SHOULDERS OF GIANTS” J-WAVE公開収録」
今年の東京国際映画祭のオープニング作品『PERFECT DAYS』でヴィム・ヴェンダース監督と共同脚本・プロデュースを担当した高崎卓馬が、J-WAVE特番“SHOULDERS OF GIANTS”を公開収録。ラジオパーソナリティ・クリス智子の進行による多数のゲストとの小津を巡るトーク、そして映画『PERFECT DAYS』で劇中歌を歌う金延幸子のミニライブも開催。番組の放送は11月3日(金・祝)18時から21時55分予定。

日時:2023年10月27日(金)19時15分開場/20時開始/21時30分終了
会場:コレド室町テラス 1F大屋根広場
特設ホームページ: こちら(9月27日以降に公開予定)

④関連上映

『連続ドラマW OZU~小津安二郎が描いた世界~』
世界のOZUの原点である初期サイレント映画6作品を気鋭の映画監督6人がWOWOWでオムニバスドラマとして現代リメイクしたものの3話分をTIFFシリーズ部門にて上映。
【上映作品】
『生れてはみたけれど』(監督:吉田康弘)、『非常線の女』(監督:松本優作)、『出來ごころ』(監督:城定秀夫)

「山崎バニラの活弁小絵巻2023」
『突貫小僧マーヴェルグラフ版』(新たにフィルムが見つかったロングバージョン)を声優としても活躍している山崎バニラの活弁付きでユース部門にて上映。

Nippon Cinema Now部門特集〈城定秀夫監督〉

この1年の日本映画を対象に、特に海外に紹介されるべき日本映画という観点から選考された作品を上映する同部門では、デビューから100本以上の作品を手がけ、昨年だけでも『愛なのに』『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』『夜、鳥たちが啼く』など、話題作が立て続けに公開され、精力的に良作を生み出している実力派・城定秀夫監督を特集する。

上映作品

『アルプススタンドのはしの方』(2020)、『愛なのに』(2022)、『ビリーバーズ』(2022)、『銀平町シネマブルース』(2023)
※いずれも英語字幕付き上映

アニメーション部門特集

昨年までのジャパニーズ・アニメーション部門が、アニメーション部門としてコンセプトも新たに再スタートする。ひとつめの柱は「ビジョンの交差点」と題して海外での話題作も取り上げ、国内の最新作と合わせて9作品上映。またレトロスペクティブは「海外映画祭と監督」というテーマで、海外映画祭で賞に輝いた監督の作品を3作品上映。

上映作品

『アートカレッジ1994』(2023)、『深海レストラン』(2023)、『トニーとシェリーと魔法の光』(2023)、『ロボット・ドリームズ』(2024年公開予定)、『リンダはチキンがたべたい!』(2024年公開予定)以上洋画作品
『かがみの孤城』(2022)、『BLUE GIANT』(2023)、『北極百貨店のコンシェルジュさん』(10月20日公開)、『駒田蒸留所へようこそ』(11月10日公開)
<海外映画祭と監督>
『夜明け告げるルーのうた』(2017/湯浅政明監督)、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019/片渕須直監督)、『音楽』(2020/岩井澤健治監督)

他にもワールドフォーカス部門で「ラテンビート映画祭」とのコラボレーションによるスペインや中南米の秀作に加え、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターとの共催による「台湾電影ルネッサンス2023」、生誕100周年を迎えるイタリアの巨匠・フランコ・ゼフィレッリ特集、スペインのバスク地方の映画の特集、アジアン・フィルム・アワード・アカデミーとの共催による香港映画の特集といった多彩な特集上映も行われる。また、韓国での日本大衆文化開放25周年の特別上映として『シュリ〔デジタル・リマスター版〕』(1999)と『Love Letter』(1995)の上映も行われる。

第36回東京国際映画祭は2023年10月23日(月)~11月1日(水)に日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催